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犬と病理医の陽気なおしゃべり、そして大垣書店京都本店・医書ビブリオバトルを盛り上げるオンラインPOP対決!

第4回 ベーカー街のやさしい小児科医(ほむほむ編・後編)

「前編」に続いて「後編」をお届けします。

「やさしい医療情報」イベントの裏話をお伝えすべく、犬と病理医がああだこうだと話しながら、時にゲストを呼んでチャットで盛り上がる本企画。今回はチャットしてるだけで「聖人か!」と謎のツッコミをしたくなる、ほむほむ(堀向健太)先生をお招きしてお話しております。

 例によって脱線続きで、途中で「シャーロック・ホームズ」の話とか出てきますが、どうぞご寛恕いただきお付き合いください。

 

前回記事↓

snsiryounokatachi.hatenablog.com

 

 

 

■SHARPさんとタニタさんの印象は?

 

 

ほむほむ先生は、今回のイベントでの「お題」(SHARPさん 、タニタさんと3人で「やさしい医療情報」について語る)を聴いて、まずどう思ったのでしょうか?

twitter.com

 

twitter.com

 

参考:

sns-medical-expo.com

 

 

私はSNS自体、ツイッターがはじめてなので、歴史のながいSHARPさんやタニタさんはすごいなあと眺めていました。それで、大きな企業の公式ツイッターの運営の方とお話できるのは、すごい楽しみですね。

 

座組を考えたのはヤンデル先生なんですよね。なにか思惑、というか、共通点があったんでしょうか?

 

共通点として、情報を届ける側としての考え方……はわかりませんが、おそらく考えを経て出てきたであろう「ことば」が、とにかく受け手にきちんとマッチしているということがあげられます。

 

さきほどほむほむ先生がちょっとおっしゃっていましたが、情報を出す時にはただ引っ張ってくるのではなくて、受け手に応じて変えて行かなければいけない、とのことでした。そのへん、タニタもSHARPもよくわかってます。「これを宣伝してくれ」とか「これを広報してくれ」と言われたものをそのままツイートしていない。

 

(編注:このとき、ほむほむ先生もほぼ同時に発言しました)

 

私は臆病なので、今のフォロワー数でももう怖くてしょうがないんですが。みなさんがどんなことを考えて情報発信をしているのかなと思うんです。

でもね、シャープさんの最近の発信をみて思ったんです。

  

(話がふたつに割れましたが、それぞれ続きをお書きください)

 

シャープさんの、最近のマスク騒動のときに、ほぼ誰も、シャープさんを非難しませんでしたよね。

 

 

これって、SHARPさんが、「日々の情報発信を丁寧に続けてきた上でのフォロワーさんだから」だと思うんです。

 

おおおお、なんか並行して話していたことが、ひとつになりつつある。

 

衆目を集めるための情報発信をしているわけではないんですね。これはタニタさんもそうです。

 

なるほどなあ。

 

自分が好きなことや、知ってほしいことを、きつくない表現で発信することがいいのかなと思うんです。

そこに、「人となり」が滲んでくるのがいいのかなって。

偉そうにいっちゃいましたが。

 

ちなみにぼくがゲストとして考えていたのは、タニタさんが先、SHARPさんがあとです。ほむほむ先生のおっしゃるように、人となりが見える方だ、というのがでかい。

 

ふむふむ。

 

そして、お二方をほむほむ先生と会わせたいと思った最初の時点では、SHARPはまだマスク製造してません。結果的にSHARPさんもマスクの話に関わってしまいましたが、あれはぐうぜんです。

 

タニタさんはもともと健康関連産業だし、SHARPさんもマスクを生産することになって、その一角に加わることになったということですね。なるほど。

 

 

■「玄関をきちんときれいにしている」

 

 

企業の広報メッセージと臨床トークって、対極にあるような気もしますが、「どうすれば話を聞いてもらえるか」という一点で、学び合えるポイントがありそうだ、ということですね。特に「情報の包み方」みたいなところで。

 

SHARPさんも、タニタさんも、受け手のことを「想像して」発信されていることがめちゃくちゃわかるんですね。

 

先ほど(「前編」参照)ほむほむ先生がおっしゃっていた、2階、1階、玄関、という分け方で、タニタやSHARPは「玄関をきちんときれいにしている」というイメージがあります。

 

そうです。

どのようにしたら、伝わるか、を想像されているんですよね。

 

(ちなみにこれは個人的な印象ですが、SHARPさんは計算して血を吐きながらそれをやっているタイプで、タニタさんは天然でそれをやれるタイプです)

 

(ぼくは天然で血を吐くタイプです)

 

きみは叩かれて鼻血だしてるタイプだよね。

 

それぞれの方法で、スモールステップを踏もうとしているんですね。

ヤンデル先生は、あえて血を(地を)はこう(はおう)としているからなあ。

そんなに天才的なのに。

 

ステップを刻む方々どうしを鼎談させようと思い付いたぼくは確かに甜菜だったなあ。

 

てんさい。

 

どうしてこんな誤変換が起こるんだ!(憤怒)

 

天才と甜菜で、なぜ先に甜菜がでるんだ笑

 

 

■Twitter、仕事、プライベートでの違い

 

 

企業公式アカウントの話が出たのでちょっとその点も伺おうかなと思うのですが、「Twitterのほむほむ先生」と、「診察室の堀向医師」と、「家でのんびりテレビ見てる堀向健太さん」とでは、かなり性格的な違いがありますか?

 

おっいい質問だなあ……。

 

ああ、そこは本当に違いがないんですよ。

 

ゲェーッ!

 

まじですか。それは意識してらっしゃいますか?

 

使い分けが苦手なんです。

 

そうはいっても、相手が不特定多数だと、なかなか難しい部分があると思うのですけども、そういうミスマッチみたいなものは起きていませんか?

「やさしい医療情報」って、根本的にはコミュニケーションの話だと思うんですよね。その難しさ。だからこそ、SNS上で相手が不特定多数の時と、診察室のような場所での特定少数とで、「使う顔」とか「口調」を切り替えているのかなと思ったのですが…。

 

場所によって使い分けできないのは、たぶん大きな欠点でもあるかと思います。

良くも悪くも正直すぎるので、思ったことをいってしまうし。

私は、もともとは「厳し目のオールドタイプ医師」だったと思うんです。ステロイド外用薬を忌避なんて、みたいなですね。

 

意外です。

 

良きにつけ悪きにつけ、正直で隠し事ができない人間なので…。

ですけど、歳を重ねるうちに、それでは最終的には患者さんのアウトカムを良くしないことが実感できるようになって、話し方を工夫するようになったんです。

けいゆう先生や大塚先生は、わたしよりずっと先にその時点にたどり着いているんですよね。

 

ほほー、、、。自分の口調ひとつで、結果的に患者のためにならない、と。ふむ。それは、医師何年目くらいで変わってきたと考えてらっしゃいますか?

 

これは、医師のなかでもよくいわれることかもしれませんが、3-4年目くらいで「できるようになってきた」と天狗になって、その後、鼻っ柱をおられるという経過をとることが多いんじゃないかと思います。

 

リアルだ。

 

リアルなのか。。。

 

 

■「分け隔てをなくすこと」と「背負うこと」

 

 

あるとき、立て続け患者さんを亡くしてしまうことがあって。

 

う、、、それはキツいですね。。。

 

そのご家族が、最後に病院を去られるときに、お写真をくださったんです。

 

写真ですか。

 

お子さんの医療的な処置をするために、お子さんを真剣な顔で覗き込んでいる、私とお子さんの写真です。

 

ああ、そういう構図だったのか……。

 

私は、患者さんを亡くしたあと、落ち込みが長く続くほうで…

患者さんのご家族のほうが、私を慮られたのではないかと思っています。

 

なるほどなあ。。。。

 

その後、ずっと書斎に飾っているのですが、心もちがわかったように思います。

 

先ほどの話ですが、「診察室での自分」と、「家でくつろいでいるときの自分」が違うタイプの人のほうが、「落ち込みが長く続くこと」を回避しやすいように思います。ほむほむ先生は逆にいえば、「診察室で起こったこと」という分け隔てをなさらないままずっとここまでやっていらっしゃるのですね。

 

おお、つなげ方がすばらしいな。そういうことか。「切り分けられない」と「背負うこと」。

 

 

■仕事が忙しすぎて私生活がなくなる(結果的に分けられなくなる)

 

 

「心もち」のことをもう少しおうかがいしても?

 

そうですね…。多分、ヤンデル先生もそうなんでしょうけど、我々が医師になったばかりのころって、私生活と仕事が一体化していましたよね。

 

そうですね、していました。

 

医師になった1年目は、1日も休みなしで。

2年目は、病院から15分以上はなれたところに行けなくて。

 

わー……これが噂の医療ブラック…。

 

熱心な方にときおりみられる、「よくあること」です……。

 

「ワークライフバランス」が「ワークアズライフ」となる、さらに前の時代ですね。

 

3年目は、月に200-300時間とか残業して。

4年目は、日が変わるまで帰宅できないという感じでした。

 

まさにワークアズライフ……。

 

「(公私が)一体化せざるをえない環境」だったわけですね。

 

生活と仕事が一体化して、患者さんを亡くしたときは、家族が亡くなってしまう気持ちに近くなってしまっていました。

 

これはちょっと、、、、「ほむほむ先生は、もうちょっと切り分けたほうがいいのではないか、切り分けないと心が死んでしまうのではないか」みたいな話をしたほうがいい気が…。。

 

そういう意味で、生活しているときの自分と、仕事をしているときの自分が一体化してしまったのかもしれないですね。

 

これについては、「公式アカウント」として名高いSHARPとタニタがどういう感じなのかも、いずれぜひ聞いてみたいところです。

いずれね。

 

それで、医師をしている間にさけられない「死」から、すこし離れた科としてはアレルギー科だったのかもしれないですね。

 

たらればさんの言う「もうちょっと切り分けたほうがいいのではないか」についてのひとつの答えは、「切り分けられるかどうかによって、医者としてのスタイルも変わるかもしれない」ってことかなあ。

 

わたしの業界(出版界)でも、かつては「仕事人間タイプ」が多くて、で、えてしてそういうタイプが業績を上げることが多かったです。業界構造にも組み込まれていた気がします(もちろん医師ほどではないにしても)。

ただそういうタイプは「人間的成長」と「職業的成長」が合わさって進行して、で、あるところでどんづまるんですよね……。簡単に言うと、業界全体が成長していたり、社会全体が成長していれば、まだそういうスタイルを許容できる余地があるけど、ある程度成熟するとどんづまる。

 

ふむふむ。

 

具体的にいうと、本人はまあ仕方ないんですけど、そういうスタイルって、周囲に迷惑がかかるでしょう。その迷惑のぶん、「そのぶんのマイナス」も勘定に入れると、それほどプラスでもないんじゃない? みたいなことが多い気がしています。なので、ある程度切り分けたほうがよくないか、という話に。

 

仰るとおりで、どんづまったところで、皆さんに会うことができたのが、SNSだったわけです。

 

なるほどね。

 

そのとおりです。SNSの活動をしていて、私も(たぶん)いい方向にかわってきているのではないかなあと思っています。

みなさんのおかげですね。

 

おお、なんといい着地点を。

 

リアクションが聖人だ

 

たしかに。

 

 

■新型コロナで切り離されているもの

 

 

最後に恒例の質問を。この新型コロナ禍で何か変わりましたか?>ほむほむ先生

 

そうですね…。

遠隔診療とか、電話診療とかのはなしが盛り上がっていますよね。

 

盛り上がっていますね。

 

お、そういえば可能になりましたよね。遠隔診療、もう経験されましたか?

 

でも、そういうのがいい面もあるにせよ、私はオールドタイプなので、どうしても直接お話をしたり、診察したりを重要視するんですよね。

なんというか、患者さんのオーラをみるというか、第六感というか、そういうのが捨てきれないんです。

実際、「おかしいな」という視線でみて、助けられたことは結構あります。

 

「おかしいな」ですか。

 

小児救急の考え方でPAT(pediatric assessment triangle;PAT)というのがあるんですね。

www.igaku-shoin.co.jp

 

ふむふむふむ。PAT。

 

今度は医学界新聞……まったく頭の中どうなってるんだ。

 

お子さんの雰囲気をみて、「その日にお家へ帰せるかどうか」を決めているところがあります。医学はたぶん、ひととひとの繋がりがあっての話なんですよね。

 

外観(appearance)の部分はまさに「雰囲気」とでもいうべきものを重要視していますね。

 

 

■観察と診察、シャーロック・ホームズとほむほ…

 

 

『シャーロック・ホームズ』で、ホームズがベーカー街に来た依頼者と会うと、その依頼者の職業や来歴をバンバン言い当てるシーンがあるじゃないですか。

 

おっ、ホームズ。ありますね。

 

あれ、「診察」のテクニックなんですよね。作者であるコナン・ドイルはもともと医師だったし、ホームズのモデル(ジョセフ・ベル)はドイルの師匠筋にあたる実在の医師ですし。

たぶんほむほむ先生が「オーラ」と仰っているのは、そういう「観察」の集積としての「診察」の一環なんだろうなあと思います。

 

そういうのってあると思っています。

普通に外来で、「お母さん、最近、心配のオーラが減ってきたようにおもうんだけど、私の思い違いだろうか?」とかってお話することもあります。

 

ああなるほどなあ、ホームズのあれはたしかに医業だなあ。

 

そういうのって、顔色とか、お化粧をがかわったとか、近くに立つとか、座ったときの態勢とかでわかってくるんですね。

ドアの開け方とか、そんなこともみています。

 

そうか、たとえばマイク越しの声のトーンとか、モニタ越しの顔色とかでは伝わらないことがあるんでしょうね…。なるほどなあ。動作でもそうか。情報量がぜんぜん違うと。

 

そういうのは、遠隔診療でできるのかって思うんです。

 

まさかほむほむって、ホームホーム……ホームs……ホームズ!

 

うまいな。ちょっとくやしい。

 

 

遠隔ホームズだとどっちかっていうとコナン君になってしまう……。

 

 

■「遠隔」で失ってしまうものは…?

f:id:snsiryounokatachi:20200520085443j:plain

写真/Adobe Stock

 

コロナの問題は、ひととひとの距離がおおきくなってしまったことが最も大きな問題です。

 

患者側としてはすごく便利なんですけどね、遠隔診療。なんとか技術進化で直接診療との差を少なくしてもらいたいなあ。

 

そうですね。

でも、たらればさん。

 

はい。

 

たらればさんは、医師に、「手軽な診療」をされたいですか?

 

それは困ります。

 

たぶん、私がオールドタイプだからなんですが、できれば、患者さんと、直接お話をして、聴診をして、一緒に考えたいです。

そして、今も、チャットではなくて、直接、たらればさんやヤンデル先生とお話するほうがいいと思っていますよ。

 

なーるーほーどーー。

 

えっ……そんな……うわさとかされると恥ずかしいし……。

 

噂はもうめっちゃされてるから。

 

たらればさんも、ヤンデル先生も、そうですよね?

 

そうです。まったくです。

ぼくの「リアル用の分人」は、人に会いたくて泣いていますよ……。

 

そりゃあもう。落ち着いたらお酒でも飲みながらぜひ。

対面と遠隔とで、どういう情報が抜け落ちて、何が欠けるのか、を考えるいい機会になってますよね。思っていたより失うものは大きいぞこれは、という。

 

あー。

 

私は、どちらかというと引きこもりですけど、今回のコロナでは、やっぱり人と人の繋がりは、リアルであるほうがいいんじゃないかと思っています。そういう機会ですね。仰るとおり。

 

よしではそろそろ第二回をしめましょう。

 

今日もきれいにまとまりましたね。さすがです。

 

ありがとうございました! さすが皆さんです。

 

はい、ではたいへんお疲れさまでした。8月のイベント鼎談、すげえ楽しみにしております。

 

楽しみにしています!

 

( ‘-^ )b=b

 

「前編」、「後編」合わせて約14000字、なんでしょうこれ、構成に問題があるのでしょうか。ほむほむ先生をお迎えしてのチャットトーク、興味深い話が盛りだくさんで、あっという間の1時間半でした。個人的にはびゅんびゅん参考文献が出てくるのに、こっちの話もしっかり聞いて合わせてくるほむほむ先生の「あたたかさ」でした。なんか宗教家と話しているみたい。小児科医ってすごいなあ。

 さてさて今回はここまで。続いてもゲストをお迎えしてお送りいたします。ではまた!

 

構成、見出し:たられば

 

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2020年8月23日オンラインイベント #SNS医療のカタチTV (やさしい医療の世界) /© 2020 SNS医療のカタチ/背景画像 Adobe Stock/Happy monkey